増鏡 - 後醍醐天皇
立ち帰ってまた越えて行く関だと思いたいものだ。都で聞いていた逢坂の山よ。
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伝え聞く昔語りこそがつらいのだ。その名の古びた三日月の森よ。
いかにも月日も知らぬ我が身であろうけれども、衣がえをした今日ではないか。
増鏡 - 尊良親王
思ったことがあろうか。恨めしかった武士の名残を、今日は慕うことになろうとは。
増鏡
つくづくと眺めて日を暮らして、入相の鐘の音につけても、君が恋しいことだ。
憂いの上にまた重なる夢を聞きながら、お驚かせもしないで歎いてきたことだ。
増鏡 - 宣旨の三位
憂いの上にまた重なる夢を聞きながら、驚かせもしないでどうして歎いていたのだろう。
増鏡 - 藤原為世
和歌の浦にいる八十余りの夜の鶴、その子を思う声が、どうして聞こえないのだろうか。
増鏡 - 後伏見院
雲の上に聞こえないことがあろうか。和歌の浦に老いた鶴の、子を思う声は。
増鏡 - 花山院師賢
別れるとしても何を歎こうか。君が住まなくなって、憂い故郷となってしまった都を。
増鏡 - 北の方
今はこれまでといって命を限る別れ道は、後の世でなくてはいつを頼みにしようか。
増鏡 - 源具行
生き長らえて身はいたずらに、初霜の置く方も知れぬように、身の置き所も知らぬ世を経ていることだ。
今はもうどうなってしまった憂き身かと、同じ世にいてさえ尋ねてくれる人もない。
返るはずの時もないので、これがその、行くのを限りとする逢坂の関なのだ。
消えかかる露のような命の果ては見届けた。それにしても東の行く末が知りたいことだ。
目ざす方を尋ねてみたいものだ。浪の上に浮かんで漂う海人の釣舟よ。