- 歌の意味
- 鈴虫が声の限りを尽くして鳴いても、長い秋の夜は明けず、私の涙も尽きることなく降り続くことだ。
- 鑑賞
-
第一部 桐壺
靫負命婦は更衣の里を訪れ、荒れはてた邸の様子と母君の嘆きに接して、ともに涙を流す。帝の言葉を伝え、母君と語り合ううちに夜も更け、命婦はもう帰らねばならないと言いながら、この歌を詠んで別れを惜しむ。この歌を受けて母君が返歌を詠み、命婦は形見の品を託されて宮中へ戻る。
「鈴虫」は秋の夜に鳴きしきる虫で、その声の限りを尽くす姿に、命婦自身の尽きせぬ涙が重ねられている。「あかず」は「夜が明けない」と「飽きない
尽きない」の両義で、長い夜と尽きない悲しみとが一語で結ばれる。訪ねてきた側である命婦が、遺族と同じだけ涙を流しているという構図が、更衣の死の重さを外側から示している。
鈴虫:秋に鳴く虫。ここでは声を尽くして鳴くさま。
あかず:「夜が明けない」と「尽きない」を掛ける。
ふる:「降る」に「経る」を響かせる。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌