憂きふしを心ひとつに数へきて
こや君が手を別るべきをり
- 歌の意味
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つらいことを自分の心一つに数えてきたが、これが、あなたの手と別れるべき時なのだろう。
- 鑑賞
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第一部 帚木
指を噛まれた左馬頭がふざけた歌を詠みかけると、嫉妬深いその女はすぐさまこの歌を返す。表向きは軽口に応じながら、内心では別れの覚悟を口にした形になっている。左馬頭はなお言い争いを続けたまま家を出て、そのまま足が遠のき、女は病に沈んで亡くなってしまう。左馬頭は後になって、あの女こそ家の妻とするにふさわしかったと悔やむことになる。
「憂きふし」は相手の歌の語をそのまま受け取り、贈答歌の作法どおりに言葉を返している。ただし左馬頭が指の節を数えたのに対し、女は自分だけが数えてきた心のつらさへと意味をずらしている。「こや」は「これがそうなのか」と念を押す言い方で、軽い応酬の形をとりながら、実際にはこれが最後の別れになるという予感が置かれている。話し手の左馬頭本人が意図を読み違えていた点が、この体験談の重さになっている。
憂きふし:つらい出来事。相手の歌の語を受ける。
心ひとつに:自分の心の中だけで。
こや:これがそうなのか。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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