古典和歌stream

琴の音も月もえならぬ宿ながら
つれなき人をひきやとめける

歌の意味
琴の音も月も何とも言えずすばらしい家でありながら、その琴で、つれない人を引きとめることができたのだろうか。
鑑賞
第一部 帚木

 左馬頭は続けて、風流に過ぎた女の話を語る。その女のもとへ通わなくなった後、月の美しい夜に家の前を通りかかると、中から和琴の音が聞こえてきた。左馬頭が笛を吹き合わせていると、同行していた殿上人がこの歌を口ずさむ。歌はそのまま女のもとへ届けられ、女は返歌をよこす。左馬頭はこの一件でかえって女への興ざめを深め、通うことをやめてしまう。

 「えならぬ」はこの上なくすばらしいという意で、琴の音も月も申し分のない場だと持ち上げておきながら、後半で「つれない人を引きとめられたのか」と皮肉に転じる。「ひき」は琴を「弾く」と人を「引く」を掛けた語で、風流の技だけでは人の心をつなぎとめられないという指摘になっている。雨夜の品定めが女の趣味や教養の是非を論じる場であることを、一首の中で言い当てている歌である。

えならぬ:何とも言えないほどすばらしい。
ひき:琴を弾くと、人を引きとめるを掛ける。
つれなき人:冷淡で通ってこない人。
作者
紫式部
出典
源氏物語
その他の歌