- 歌の意味
- 塵を払う袖までも涙に濡れている常夏に、嵐まで吹き添える秋が来てしまった。
- 鑑賞
-
第一部 帚木
頭中将の返歌を受けて、女がさらに詠んだのがこの歌である。すでに正妻の家からの威嚇を受けており、身の置きどころのない不安を訴えたものだが、女は涙を見せてもすぐに紛らわせ、正面から恨み言を言うことはなかったと頭中将は語る。この歌の後、女は幼い娘を連れて姿を消し、頭中将の話は行方知れずのまま終わる。
「常夏」は前の歌の語を受けて自分自身を指し、贈答歌の流れをそのまま続けている。「露けき」は涙に濡れているの意、「あらし」は正妻方からの圧力を表し、「秋」に「飽き」を掛けて男の心変わりへの不安を重ねている。掛詞を重ねながらも声高にはならず、季節の移り変わりとして自分の境遇を述べるにとどめている点に、この女の性格がよく表れている。
露けき:涙で濡れている。
あらし:嵐。ここでは正妻方からの圧力のたとえ。
秋:季節の秋に「飽き」を掛ける。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌