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つれなきを恨みも果てぬしののめに
とりあへぬまでおどろかすらむ

歌の意味
つれない人を恨みきらないうちに明けてゆく東雲に、取るものも取りあえないほど、鶏はなぜ私を急き立てるのだろう。
鑑賞
第一部 帚木

 雨夜の品定めの翌日、源氏は方違えのため紀伊守の邸に泊まる。そこには紀伊守の父である伊予介の後妻、空蝉が身を寄せていた。源氏は夜更けに空蝉の寝所へ忍び入り、抵抗する空蝉を抱き取って一夜を過ごす。夜が明けかかり、鶏の声に急き立てられて別れなければならなくなった源氏が詠んだのがこの歌である。空蝉はこれに返歌をし、源氏は後ろ髪を引かれる思いで立ち去る。

 「しののめ」は夜明け方の空で、後朝の別れの時刻を示す。「とりあへぬ」は「取るものも取りあえない」の意に「鶏」を響かせた語で、鶏の声が別れを急がせる場面をそのまま歌に取り込んでいる。相手のつれなさを恨みきらないうちに、という言い方で、一夜の逢瀬がまったく満たされないまま終わったことを述べており、空蝉との関係が最初から一方通行であることを示している。

つれなき:冷淡である。
しののめ:夜明け方。
とりあへぬ:取るものも取りあえない。「鶏」を響かせる。
おどろかす:目を覚まさせる、急き立てる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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