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見し夢を逢ふ夜ありやと嘆く間に
目さへあはでぞ頃も経にける

歌の意味
あの夜見た夢のような逢瀬が、もう一度あるだろうかと嘆いているうちに、目を合わせることさえないまま日々が過ぎてしまった。
鑑賞
第一部 帚木

 空蝉に拒まれ続けた源氏は、空蝉の弟である小君を身近に召し使い、その手引きで再び逢おうとする。小君はよく懐いて源氏の言うとおりに動くが、姉の空蝉は固く心を閉ざしたままである。何度も文を送っても返事がなく、源氏がついに詠み送ったのがこの歌である。空蝉はこの歌にも返事をせず、源氏の思いはますます募っていく。

 「見し夢」は空蝉と過ごした一夜を指し、現実の出来事を夢のように言うことで、二度と繰り返せないものだという感覚を出している。「目さへあはで」は「目を合わせることさえできない」の意で、「逢ふ」と「合ふ」を重ねながら、逢瀬どころか顔を見ることすらかなわない現状を述べる。恨みを述べるというより、時間だけが過ぎていく無力さを言う形になっている。

見し夢:あの夜の逢瀬。現実を夢にたとえる。
逢ふ夜:逢瀬の夜。
目さへあはで:目を合わせることさえなくて。
頃も経にける:月日が過ぎてしまった。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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