空蝉の身をかへてける木のもとに
なほ人がらのなつかしきかな
- 歌の意味
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蝉が殻を脱ぎ捨てて姿を変えた、その木のもとで、それでもやはりあの人の人柄が慕わしく思われることだ。
- 鑑賞
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第一部 空蝉
帚木巻で拒まれた後も、源氏は空蝉のことが忘れられず、弟の小君を手引きにして紀伊守の邸へ向かう。夕暮れ、源氏は隙間から中をうかがい、空蝉と継娘の軒端の荻が碁を打つ姿を垣間見る。夜になって忍び入るが、空蝉は人の気配を察して薄い小袿を脱ぎ置いたまま身をかわしてしまい、源氏はそこに残っていた軒端の荻と一夜を過ごすことになる。翌朝、源氏は脱ぎ捨てられた衣を持ち帰り、その衣を手にして詠んだのがこの歌である。歌は小君を通じて空蝉のもとへ届けられ、空蝉はこれを読んで一人涙する。
「空蝉」は蝉の抜け殻のことで、そのまま女君の呼び名になっている。「身をかへてける」は蝉が殻を脱いで姿を変えたという意で、衣だけを残して逃れた空蝉の行動をそのまま言い当てている。「木のもと」は抜け殻の残る木の根方であると同時に、女が去った後の場所を指す。恨みを述べるのではなく、残された衣を前にして相手の人柄を慕う気持ちだけを述べており、拒まれてなお離れがたい源氏の思いがそのまま形になっている。巻名の由来となった一首である。
空蝉:蝉の抜け殻。転じてこの世、はかないもの。ここでは女君の呼び名。
身をかへてける:姿を変えてしまった。蝉が殻を脱ぐこと。
木のもと:木の根もと。
人がら:その人の人柄、たたずまい。
なつかし:心が引かれる、慕わしい。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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