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いにしへもかくやは人の惑ひけむ
我がまだ知らぬしののめの道

歌の意味
昔の人もこのように恋の道に迷ったのだろうか。私がまだ知らない、この明け方の道よ。
鑑賞
第一部 夕顔

 八月十五夜の明け方、源氏は人目を避けて、五条の家から女を車に乗せ、荒れはてた某の院へ連れ出す。素性も明かさないまま連れ出す道すがら、源氏は自分でも思いがけない振る舞いに戸惑いを覚え、この歌を詠む。女はこれに返歌をし、不安な胸中を明かす。二人が着いた院で、その夜のうちに悲劇が起こることになる。

 「いにしへもかくやは」は、昔の人もこうであったのかと問う形で、自分の状態を古歌の世界に照らして確かめようとしている。「しののめの道」は明け方の道で、後朝の帰り道を指す語でもあるが、ここでは女を連れ出す前代未聞の道行きを言う。「我がまだ知らぬ」に、経験のなさと不安とが率直に出ており、都合のよい遊びではなく本気の惑いであることを示している。

いにしへ:昔、古い時代。
かくやは:このようであったのか。
惑ひけむ:迷ったのだろうか。
しののめの道:夜明け方の道。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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