夕露に紐とく花は玉鉾の
たよりに見えし縁にこそありけれ
- 歌の意味
-
夕方の露を得て紐を解くように咲く花が顔を見せるのは、道すがらの縁で出会ったつながりがあったからなのだ。
- 鑑賞
-
第一部 夕顔
某の院に着いた源氏は、人気のない静かな邸で、はじめて覆面を取って素顔を見せる。女もまた、素性を隠してきた自分の姿を打ち明けるでもなく、二人は初めて隔てなく向かい合う。そのときに源氏が詠みかけたのがこの歌である。女は返歌をするが、その言葉には自分を低く見る調子がにじんでいる。夜が更けると、この邸に物の怪が現れることになる。
「紐とく花」は花が開くさまであると同時に、男女が打ち解ける意をも含む。「玉鉾の」は「道」にかかる枕詞で、五条の路上で扇を通じて始まった出会いを指している。素顔を見せるという行為を、花が開くという景に重ねてやわらかく述べており、身分を隠したまま始まった関係がここでようやく一つの形を取ったことを示す一首である。
夕露:夕方におく露。
紐とく:紐を解く。花が開く意と、男女が打ち解ける意を掛ける。
玉鉾の:「道」にかかる枕詞。
たより:きっかけ、縁。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-