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見し人の煙を雲とながむれば
夕べの空もむつましきかな

歌の意味
親しんだ人の火葬の煙を雲だと思って眺めると、夕方の空までも親しく感じられることだ。
鑑賞
第一部 夕顔

 某の院で女が急死した後、源氏は騒ぎになることを恐れ、惟光の手配で東山へひそかに遺骸を移し、火葬を行う。自らも足を運んで別れを惜しむが、帰路は悲しみのあまり馬にも乗っていられないほどであった。火葬の煙を見送りながら詠まれたのがこの歌である。この後、源氏は重い病に伏し、しばらく人前に出られない日々を過ごす。

 「見し人」は親しく通った人の意で、亡き女を指す。煙を雲と見立てるのは古くからの発想だが、それによって夕方の空全体が親しいものに変わるという展開に、悲しみの深さが表れている。恨みも嘆きも言わず、空を眺めるという行為だけを述べており、抑えた表現の中に喪失の大きさが置かれている。夕顔巻の中でも最もよく知られた一首である。

見し人:親しく逢っていた人。ここでは亡き夕顔。
煙:火葬の煙。
ながむれば:眺めていると。
むつましき:親しい、心が寄る。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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