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逢ふまでの形見ばかりと見しほどに
ひたすら袖の朽ちにけるかな

歌の意味
再び逢うまでの形見とだけ思って見ているうちに、袖はすっかり涙で朽ちてしまったことだ。
鑑賞
第一部 夕顔

 空蝉の夫である伊予介が任国へ下ることになり、空蝉も都を離れることが決まる。源氏はかつて空蝉が脱ぎ捨てていった薄衣を形見として手元に置いていたが、下向にあたってそれを返すことにする。その際に添えられたのがこの歌である。空蝉はこれに返歌をし、二人の関係はこの贈答をもって一応の区切りを迎える。

 「形見」は思い出のよすがとなる品で、ここでは空蝉が残した薄衣を指す。「袖の朽ちにける」は涙で袖が朽ちるという古歌以来の言い方で、逢えないまま過ぎた時間の長さを表す。返すという行為が別れの意味を帯びる場面であり、恨みを述べるのではなく、ただ涙の量を言うことで思いの深さを示す形になっている。

形見:思い出のよすがとなる品。
見しほどに:見ているうちに。
ひたすら:すっかり、ひとえに。
朽ちにける:朽ちてしまった。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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