生ひ立たむありかも知らぬ若草を
おくらす露ぞ消えむそらなき
- 歌の意味
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これから生い立っていく先も分からない若草を、後に残して消えていく露には、消えていく空もない。
- 鑑賞
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第一部 若紫
瘧病を患った源氏は、加持を受けるため北山の聖のもとを訪れる。少し体調が落ち着いた夕暮れ、あたりを歩いていた源氏は、小柴垣に囲まれた僧坊をのぞき見る。そこには尼姿の年配の女性と、十歳ばかりの美しい少女がいた。少女は雀の子を逃がしたと泣いており、その髪を撫でながら祖母である尼君が詠んだのがこの歌である。源氏はこの垣間見によって少女に強く心を引かれ、やがてその素性を尋ねることになる。
「若草」は幼い孫娘、すなわち後の紫の上を指し、「露」は先立とうとしている尼君自身をたとえる。露は消えるものと決まっているが、その消えていく空さえないというのは、心残りで死にきれないという意味である。幼い孫を残していく祖母の不安が、草と露という一続きの景の中に収められている。若紫巻の冒頭近くに置かれ、この後の物語全体を動かす一首でもある。
生ひ立たむ:これから成長していく。
ありか:居場所、行く末。
若草:幼い少女のたとえ。ここでは後の紫の上。
おくらす:後に残していく。
そらなき:消えていく空もない。心残りで死にきれない意。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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