初草の生ひ行く末も知らぬ間に
いかでか露の消えむとすらむ
- 歌の意味
-
初草が生い育っていく行く末も分からないうちに、どうして露は消えようとするのだろうか。
- 鑑賞
-
第一部 若紫
尼君の「生ひ立たむ」の歌を聞いた、そばに控えていた女房が涙ぐみながら返したのがこの歌である。主人である尼君の弱気な言葉をたしなめ、まだ先は長いのだからそのようなことを言うものではないと慰めている。垣根の外でこのやり取りを聞いていた源氏は、この家の女性たちの心づかいの細やかさに触れ、少女への関心をいっそう深めることになる。
「初草」は相手の歌の「若草」を受けた語で、贈答歌の作法どおりに言葉を引き継いでいる。「露」も同じく尼君を指し、二首が同じ景の中で完全に対応する形になっている。尼君が「消えむそらなき」と嘆いたのに対し、こちらは「いかでか消えむとすらむ」と問い返しており、同じ語を用いながら意味を反転させる技法がよく効いている。主従の情の細やかさが伝わる一首である。
初草:春に萌え出たばかりの草。幼い少女のたとえ。
生ひ行く末:成長していく将来。
いかでか:どうして。
消えむとすらむ:消えようとするのだろうか。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-