- 歌の意味
- 夕暮れにほのかに花の色を見たので、今朝は霞が立ってしまい、立ち去りかねている。
- 鑑賞
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第一部 若紫
山を下りる前に、源氏は僧都を通じて尼君のもとへこの歌を送る。前夜の垣間見で少女の姿を目にしたことを踏まえ、このまま帰るには心残りだと訴えたものである。少女を引き取りたいという申し出はすでに退けられていたが、源氏はなお諦めていない。尼君はこの歌にも返しを送り、源氏の申し出をやんわりとかわす。
「夕まぐれ」は夕暮れどきで、垣間見をした時刻を指す。「花の色」は少女の美しさをたとえたもので、山桜の景と重なる。「霞の立ち」は春の霞であると同時に、「立つ」に立ち去るの意を掛けており、霞のせいで出立しかねるという形で、去りがたい思いを述べている。景と心情を掛詞一つで結び合わせる、典型的な贈答歌の作りである。
夕まぐれ:夕暮れどき。
ほのかに:かすかに、ぼんやりと。
霞の立ち:春霞が立つ。「立ち去る」を掛ける。
わづらふ:しかねる、ためらう。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌