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いはけなき鶴の一声聞きしより
葦間になづむ舟ぞえならぬ

歌の意味
幼い鶴の一声を聞いてからというもの、葦の間で行き悩む舟のように、思いは進まず耐えがたい。
鑑賞
第一部 若紫

 秋の末、北山の尼君が都へ移り、六条京極あたりの荒れた家で病に伏していると聞いた源氏は、忍んでその家を訪ねる。少女を引き取りたいという願いは変わらず、あらためて申し入れるためである。この歌は、その折に尼君へ向けて詠まれたものである。尼君は病が重く、はかばかしい返事もできないまま、まもなく亡くなってしまう。

 「いはけなき鶴」は幼い少女をたとえた語で、鶴は長寿の象徴でもあり、将来への願いを含む。「葦間になづむ舟」は葦の茂る浅瀬で進めなくなる舟のことで、思いどおりにならない状態を表す古歌以来のたとえである。鶴と葦と舟という水辺の景で一首がまとまっており、幼い相手への求婚という難しい内容を、静かな景の中に収めている。

いはけなき:幼い、あどけない。
鶴:長寿の象徴。ここでは幼い少女のたとえ。
葦間:葦の茂る間。
なづむ:行き悩む、進みかねる。
えならぬ:堪えがたい。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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