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ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の
露分けわぶる草のゆかりを

歌の意味
まだ根は見ていないけれど、いとしいと思う。武蔵野の露を分けて行きかねている、あの草のゆかりを。
鑑賞
第一部 若紫

 源氏は少女を二条院へ迎え、西の対に住まわせる。手習いや絵を教えながら、少女は少しずつ源氏になじんでいく。ある日、源氏が手習いの紙に武蔵野のことを書きつけ、その脇に少し小さく書き添えたのがこの歌である。少女はこれを読み、意味を尋ねるように自分でも歌を書く。二条院での二人の暮らしが始まり、若紫巻はこの手習いの場面で結ばれていく。

 「ね」は紫草の根で、「根を見る」には契りを結ぶ意が重なる。「武蔵野」は紫草の名所として知られ、藤壺とのゆかりを暗示する。「草のゆかり」は紫草につながる草、すなわち藤壺の姪である少女を指す。まだ幼い相手に対して、血縁のつながりゆえにいとしいと述べる内容であり、この巻を貫いてきた紫のゆかりという主題が、ここで一つの形にまとめられている。

ね:紫草の根。「根を見る」に契りを結ぶ意を重ねる。
武蔵野:紫草の名所として知られる歌枕。
露分けわぶる:露を分けて進みかねる。
ゆかり:縁、血縁のつながり。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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