いくそたび君がしじまにまけぬらむ
ものな言ひそと言はぬ頼みに
- 歌の意味
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幾度あなたの沈黙に負けてきたことだろう。ものを言うなとは言われないことだけを頼みにして。
- 鑑賞
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第一部 末摘花
八月二十日過ぎの夜、命婦の手引きで源氏はついに姫君の部屋の近くまで通される。しかし姫君はまったく口をきかず、こちらの言葉に応じる気配もない。押し黙ったままの相手に向かって、源氏がなお言葉を尽くして詠みかけたのがこの歌である。それでも姫君は答えず、見かねた乳母子の侍従が代わりに返歌をする。源氏はこの夜、姫君と契りを結ぶことになる。
「しじま」は黙り込んでいることで、姫君の徹底した無言を指す。「まけぬらむ」は負けてしまっただろうの意で、押し切れずに引き下がってきた自分を述べている。「ものな言ひそと言はぬ」は、話すなとまでは言われていないという最小限の望みで、それだけを頼りにしているという言い方に、途方に暮れた気配がにじむ。恋の歌でありながら、相手が応じないことそのものを主題にした異例の一首である。
いくそたび:幾度。
しじま:黙り込んでいること、沈黙。
まけぬらむ:負けてしまっただろう。
ものな言ひそ:ものを言うな。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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