鐘つきてとぢめむことはさすがにて
答へまうきぞかつはあやなき
- 歌の意味
-
鐘をついて、これで終わりと締めくくることはさすがにできず、それでいて答えるのも気が進まない。我ながら筋の通らないことだ。
- 鑑賞
-
第一部 末摘花
源氏の歌に対して姫君がどうしても答えられずにいるため、そばに控えていた乳母子の侍従が、姫君の声色をまねて代わりに返したのがこの歌である。若く気の利く女房で、主人の無言を取りつくろおうとしている。源氏はこの返しに、少なくとも家の中に応対できる者がいることを知る。この夜、源氏は姫君のもとへ入るが、相手の反応の乏しさに戸惑うことになる。
「鐘つきてとぢめむ」は、法会で鐘を打って論議を終える作法を踏まえた言い方で、話をここで打ち切ることをたとえる。「答へまうき」は答えるのが気が進まないという意である。打ち切ることもできず答えることもできないという板挟みを述べ、最後に「あやなき」と自分でも筋が通らないと認める形になっている。代作でありながら、寡黙な姫君の立場を過不足なく言い当てている点が巧みである。
鐘つきて:鐘を打って。法会で論議を終える作法にちなむ。
とぢめむ:締めくくろう、終わりにしよう。
さすがに:そうはいってもやはり。
答へまうき:答えるのが気が進まない。
あやなき:筋が通らない。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-