晴れぬ夜の月待つ里を思ひやれ
同じ心に眺めせずとも
- 歌の意味
-
晴れない夜に月を待っている里を思いやってほしい。同じ気持ちで眺めていないとしても。
- 鑑賞
-
第一部 末摘花
源氏からの訪れがないまま日が過ぎ、女房たちは口々に姫君へ返事を書くよう勧める。姫君はようやく筆を執り、古めかしい紫の紙にこの歌をしたためて源氏へ送る。しかし源氏はこの歌を見ても心を動かされず、そのまま脇へ置いてしまう。姫君の歌の古風さと不器用さが、源氏の関心をいっそう遠ざける結果になっている。
「晴れぬ夜の月待つ里」は、月の出ない夜に月を待ち続ける家のことで、訪れない相手を待つ自分をたとえる。「同じ心に眺めせずとも」は、あなたが同じ気持ちで空を眺めていなくてもという意で、相手に期待しない姿勢を示す。恨みを述べず、ただ思いやってほしいと願うだけの控えめな内容だが、表現は古歌の型をそのまま踏んでおり、当世風の機知には乏しい。この姫君の詠みぶりを示す代表的な一首である。
晴れぬ夜:雲が晴れない夜。
月待つ里:月の出を待つ家。訪れを待つ身のたとえ。
思ひやれ:思いやってほしい。
眺め:物思いにふけって遠くを見ること。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-