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唐衣君が心のつらければ
袂はかくぞそぼちつつのみ

歌の意味
唐衣を贈ります。あなたの心がつれないので、私の袂はこのように濡れてばかりいるのです。
鑑賞
第一部 末摘花

 年の暮れ、姫君のもとから源氏へ、正月用の衣装が届けられる。着古したような時代遅れの色合いの衣に、この歌を添えたものであった。姫君としては精一杯の心づかいだったが、源氏はその古めかしい趣味と歌のありきたりさに、思わず本音を漏らすことになる。この贈り物をきっかけに、源氏は姫君に「末摘花」というあだ名をつけることになる。

 「唐衣」は袖の大きな正装の衣で、和歌では「袖」「袂」「着る」などを導く枕詞的な語として古くから用いられてきた。「そぼつ」は涙でぐっしょり濡れることである。恨みを述べ、袖を濡らすという、女から男へ贈る歌の型を忠実になぞっており、独自の工夫はほとんど見られない。しかしその型どおりであること自体が、姫君の生真面目さと古風さを表しており、人物造形と一体になった一首である。

唐衣:袖の大きな正装の衣。和歌では「袖」「袂」を導く語。
つらけれ:冷淡である。
袂:袖の垂れ下がった部分。
そぼつ:びしょ濡れになる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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