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なつかしき色ともなしに何にこの
すゑつむ花を袖に触れけむ

歌の意味
心引かれる色でもないのに、どうしてこの末摘花に袖を触れてしまったのだろう。
鑑賞
第一部 末摘花

 姫君から届いた古めかしい衣装を前にして、源氏がつい漏らした独り言のような歌がこれである。そばには命婦が控えており、その様子を見て気まずく思う。この歌によって、故常陸宮の姫君は「末摘花」と呼ばれることになり、巻の名もここから取られている。源氏はこの後も姫君との関係を切らず、生活の面倒を見続けることになる。

 「末摘花」は紅花の別名で、花の先端を摘み取って紅の染料にすることからこの名がある。その紅い色に、姫君の鼻の赤さを重ねているのがこの歌の趣向である。「なつかしき色」は心を引く色の意で、それではないと言い切ることで、贈られた衣の色合いへの落胆をも示している。「袖に触れ」は衣に触れることと、関係を結ぶことの両方を含む。人物の呼び名と巻名の由来となった、この巻の中心をなす一首である。

なつかしき:心引かれる、慕わしい。
すゑつむ花:紅花の別名。先端を摘んで染料にする。
袖に触れ:衣に触れる。関係を結ぶ意を含む。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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