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紅のひと花衣うすくとも
ひたすら朽す名をし立てずは

歌の意味
紅に一度だけ染めた衣の色は薄くとも、その名をすっかり朽ちさせるような悪い評判さえ立てなければよいのだが。
鑑賞
第一部 末摘花

 「なつかしき色ともなしに」と口にした直後、源氏は自分の言葉が過ぎたことに気づき、続けてこの歌をひとりごちる。姫君の身の上を思えば、自分が見捨てたことで悪い噂が立つのは気の毒だという、いたわりの気持ちに立ち返っている。この場面を見ていた命婦は、源氏の心づかいを知りつつも、姫君の立場を思ってひそかに心を痛める。

 「紅のひと花衣」は一度だけ紅に染めた衣で、色が薄いことから、二人の関係の浅さをたとえている。「朽す」は評判をだめにすることで、「名を立つ」は噂が立つの意である。「うすくとも」と「ひたすら朽す」を対にして、関係が浅いことと、それでも名誉だけは守りたいという願いとを結びつけている。姫君を笑いものにしながらも見捨てられないという、源氏の複雑な立場が表れた一首である。

紅:紅花で染めた濃い赤色。
ひと花衣:一度だけ染めた衣。染めの浅い衣。
朽す:朽ちさせる、だめにする。
名を立つ:評判が立つ、噂になる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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