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見ても思ふ見ぬはたいかに嘆くらむ
こや世の人の惑ふてふ闇

歌の意味
会っても思い悩むのですから、会わない方はどれほど嘆いておられるでしょう。これが世の人の言う、子ゆえの心の闇なのでしょうか。
鑑賞
第一部 紅葉賀

 源氏の「いかさまに」の歌を受けて、藤壺のそば近くに仕える王命婦が返したのがこの歌である。二人の間を取り持ってきた立場から、源氏の苦しみと藤壺の苦しみを同時に見ており、どちらにも味方できないまま心を痛めている。命婦はこの後も対面の仲立ちには応じず、源氏は思いを募らせたまま引き下がることになる。

 「見ても思ふ」は、わが子を見ることのできる藤壺の側の嘆きを指し、「見ぬ」は子に会えない源氏を指す。「世の人の惑ふてふ闇」は、子を思う親の心の闇という古歌以来の言い方を踏まえたもので、二人の苦しみをともに子ゆえの闇として受け止めている。仲立ちの立場にある者が、双方の心情を一首の中に並べて述べている点に、この歌の役割がよく表れている。

見ても思ふ:見ていてもなお思い悩む。
見ぬ:見ることができない。
こや:これが。
惑ふてふ闇:子を思うあまり心が乱れる、その闇。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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