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おほかたに花の姿を見ましかば
露も心のおかれましやは

歌の意味
世間並みの気持ちであの花のような姿を見ることができたなら、少しも心に隔てを置くことなどあっただろうか。
鑑賞
第一部 花宴

 二月二十日過ぎ、紫宸殿で桜の宴が催される。親王や上達部が韻を賜って詩を作り、その後に舞が披露された。源氏は春鶯囀を舞い、その姿は帝をはじめ列席の人々を感嘆させる。中宮となった藤壺もその場にあり、人々とともに源氏の舞を見ながら、胸のうちでこの歌をつぶやいた。誰にも打ち明けられない秘密を抱えたまま、藤壺は表向き何ごともないように振る舞い続けることになる。

 「おほかたに」は世間並みに、ありふれた気持ちでの意である。「花の姿」は桜の宴の景を借りて源氏の姿をたとえたもので、舞う姿と花とが重ねられている。「露も」は少しもの意で、「露」の語が花の縁語としても働いている。他の人々と同じ気持ちで見られたなら、という仮定の形をとることで、そう見ることができない自分の立場をそのまま言い当てており、公の場にいながら一人だけ違う位置にいる者の孤独が表れている。

おほかたに:世間並みに、ありふれた気持ちで。
花の姿:花のような姿。ここでは舞う源氏。
露も:少しも。「露」は花の縁語。
心のおかる:心に隔てを置く、遠慮する。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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