憂き身世にやがて消えなば尋ねても
草の原をば問はじとや思ふ
- 歌の意味
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つらいこの身がこのまま世から消えてしまったなら、探してくださっても、草の原までは尋ねてくださらないおつもりなのですか。
- 鑑賞
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第一部 花宴
源氏の「深き夜の」の歌を受けて、女が返したのがこの歌である。名を名乗るように促されたことに対し、名乗らぬまま死んでしまったら墓所まで訪ねてはくれないのか、と切り返している。源氏はこの返しの機知に感心するが、名も聞けぬまま夜が明けようとするため、互いの扇を取り替えて別れる。この女こそ右大臣の六の君、後の朧月夜であり、この一夜が源氏の運命を大きく変えていくことになる。
「草の原」は草の生い茂る野で、墓所を指す語として用いられる。名を明かせば身の破滅につながる立場でありながら、拒むのではなく、死後の墓を尋ねるかどうかという形に言い換えている点が巧みである。相手の「契り」という重い言葉を、こちらは死後にまで及ぶ問いで受け止めており、若い女性とは思えない切り返しの鋭さがある。この一首によって、朧月夜という人物の造形が一気に立ち上がる。
憂き身:つらい身の上。
やがて:そのまま。
尋ぬ:探し求める。
草の原:草の生い茂る野。墓所を指す。
問ふ:訪ねる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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