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はかりなき千尋の底の海松ぶさの
生ひゆくすゑは我のみぞ見む

歌の意味
計り知れない千尋の海の底に生える海松の房が伸びていく、その行く末は私だけが見届けよう。
鑑賞
第一部 葵

 賀茂祭の当日、源氏は二条院で紫の上を伴って見物に出かけようとする。支度の前に、長く伸びた髪を自ら削いでやろうと言って鋏を取り、削ぎ終えて「千尋」と祝いの言葉を唱える。そのときに詠まれたのがこの歌である。紫の上はこれに返歌を書きつけ、源氏はその筆づかいの巧みさと若々しさに感心する。二人の関係が保護者から夫婦へ移っていく過程が、この贈答から始まる。

 「千尋」は髪削ぎの際に唱える祝いの言葉で、長寿と繁栄を願う。「海松ぶさ」は海に生える海藻の房で、長く伸びる髪をたとえている。「生ひゆくすゑ」は成長していく先の意で、幼い相手の将来を自分だけが見届けるという宣言になっている。祝言の形を取りながら、独占の意志がはっきり述べられており、後の展開を予告する一首でもある。

はかりなき:計り知れない。
千尋:非常に長い、深いこと。髪削ぎの祝言。
海松ぶさ:海藻の海松の房。長い髪のたとえ。
生ひゆくすゑ:成長していく将来。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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