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かざしける心ぞあだにおもほゆる
八十氏人になべて逢ふ日を

歌の意味
葵を挿していたその心こそ浮ついたものに思われる。大勢の人が誰彼かまわず逢う日だというのに。
鑑賞
第一部 葵

 源典侍の歌を受けて、源氏がそっけなく返したのがこの歌である。今日は誰もが顔を合わせる祭の日にすぎないのだから、そこに特別な意味を持たせるあなたの心こそ浮ついている、と切り返している。源典侍はこれをつらいと受け取り、さらに一首を返す。源氏は隣に紫の上を乗せているため、簾を上げることも気安く応じることもできない。

 「かざしける心」は相手の歌の「かざせる」を受けたもので、葵の縁語をそのまま引き継いでいる。「あだ」は浮ついている、あてにならないの意である。「八十氏人」は多くの氏族の人々、すなわち大勢の人を指し、「なべて逢ふ日」で葵の掛詞を打ち消す形になっている。相手が「逢ふ日」に込めた期待を、そのまま「誰とでも逢う日」へずらして返しており、断りの歌としては手厳しい。

かざす:挿頭にする。
あだなり:浮ついている、はかない。
八十氏人:多くの氏族の人々。大勢の人。
なべて:総じて、誰彼かまわず。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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