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悔しくもかざしけるかな名のみして
人だのめなる草葉ばかりを

歌の意味
悔しくも葵を挿してしまったことよ。名ばかりで、人を頼らせておくだけの草葉にすぎないものを。
鑑賞
第一部 葵

 源氏のそっけない返しを受けて、源典侍がさらに詠み送ったのがこの歌である。逢う日という名を頼りにした自分が愚かだったと、恨みを込めて述べている。周囲の車の人々は、源氏が誰かと同乗して簾も上げないことを不審がり、あれこれと推し量る。源氏自身も、こうした場での挿頭争いを味気ないものと感じている。

 「かざしける」は前の二首から続く語で、三首が同じ縁語の中で応酬される形になっている。「名のみして」は名ばかりでの意で、「葵」が「逢ふ日」の名を持ちながら実を伴わないことを指す。「人だのめ」は人に期待だけさせておくことである。「草葉ばかり」と言い切ることで、葵をただの草に引き下ろし、掛詞そのものを否定してみせている。滑稽な人物として描かれながら、歌の運びは終始正確である。

悔し:後悔される。
かざす:挿頭にする。
名のみ:名ばかりで実がない。
人だのめ:人に期待させるだけで頼りにならないこと。
草葉:草の葉。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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