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限りあれば薄墨衣浅けれど
涙ぞ袖を淵となしける

歌の意味
定めがあるので喪服の色は薄いけれど、涙が袖を深い淵にしてしまったことだ。
鑑賞
第一部 葵

 葬送から戻った源氏は、まどろむこともできず、生前の葵の上との関わりを思い返す。打ち解けないままに終わってしまったこと、なおざりな振る舞いで相手をつらがらせたことなど、悔やまれることばかりであった。着せられた鈍色の喪服を見て、自分が先立ったならもっと深く染めてくれただろうにと思い、詠まれたのがこの歌である。この後、源氏は経を読み、幼い若君を見ては慰められる日々を送る。

 「限りあれば」は喪服の色が身分や続柄によって定められていることを指す。夫の喪服は薄墨色と決まっており、その浅さと、実際の悲しみの深さとの落差がこの歌の眼目である。「淵」は水の深くよどんだ所で、涙で濡れた袖をたとえている。色の浅さと涙の深さを対比させることで、形式の制約の中で表しきれない悲嘆を述べており、悔恨を抱えた者の複雑な心情がよく現れている。

限りあり:定めがある。喪服の色が制度で決まっていること。
薄墨衣:薄い墨色の喪服。
浅し:色が薄い。
淵:水が深くよどんだ所。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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