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とまる身も消えしもおなじ露の世に
心置くらむほどぞはかなき

歌の意味
残っている身も消えた人も同じ露のようなこの世で、互いに隔てを置いているのは、はかないことです。
鑑賞
第一部 葵

 六条御息所からの弔問を受けて、源氏が紫がかった鈍色の紙に書き送ったのがこの歌である。長らく間があいたことを詫び、心の隔てを解こうと呼びかける形になっている。しかし御息所はこの文にほのめかされた気配を、自らの心の疚しさから敏感に読み取ってしまい、いっそう苦しむことになる。以後、二人の関係は決定的に冷えていく。

 「とまる身」は生き残っている自分を、「消えし」は亡くなった葵の上を指す。「露の世」ははかない現世をたとえた言い方で、相手の歌の「露けき」を受けている。「心置く」は隔てを置く、わだかまりを持つ意である。生死を問わずみな露のようなものだという達観の形を取りながら、実際には相手への疑いをにじませており、その二重性を御息所は正確に読み取ってしまう。弔問と返礼という形式の下で、互いの本心が探り合われている一首である。

とまる身:後に残っている身。
消えし:亡くなった人。
露の世:露のようにはかない現世。
心置く:隔てを置く、わだかまる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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