わきてこの暮こそ袖は露けけれ
もの思ふ秋はあまた経ぬれど
- 歌の意味
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とりわけこの夕暮れこそ袖が涙に濡れることだ。物思いに沈む秋はいくつも過ごしてきたけれど。
- 鑑賞
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第一部 葵
所在ない日々の中、源氏は朝顔の姫君なら今日のこの思いも分かってくれるだろうと考え、暗くなってから文を送る。長く間があいていても、もはや型どおりのやり取りとして通っている相手であったから、姫君のもとでも咎められることなく取り次がれた。空の色をした唐の紙に書かれたこの歌は、常よりも念の入った筆づかいであった。姫君はこれに短く返歌をする。
「わきて」はとりわけ、特にの意である。「露けし」は涙がちであることで、この巻を通じて繰り返し用いられてきた語である。「もの思ふ秋はあまた経ぬれど」は、物思いの秋はこれまでにも幾度もあったがという意で、今年の秋を特別なものとして際立たせる働きをしている。喪中の相手に向けた歌ではなく、自らの悲しみを訴える形をとっており、この時期にあってなお朝顔の姫君への関心を絶やさない源氏の一面が表れている。
わきて:とりわけ、特に。
暮:夕暮れ。
露けし:涙がちである。
もの思ふ:物思いに沈む。
経ぬれど:過ごしてきたけれど。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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