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なき魂ぞいとど悲しき寝し床の
あくがれがたき心ならひに

歌の意味
亡くなった人の魂がいっそう悲しく思われる。かつて共に寝た床を離れがたく思う、その心の習いのせいで。
鑑賞
第一部 葵

 左大臣邸を去る日、源氏は院へ参上する挨拶を済ませ、最後に葵の上の部屋を見まわる。調度も以前と変わらないのに、そこに人がいないという空虚さだけが際立っていた。御帳の前の硯のあたりに、葵の上が書き散らした手習いが残っており、左大臣とともにそれを手に取って見る。古歌の書きつけの傍らに、源氏が書き添えたのがこの歌である。

 「なき魂」は亡くなった人の魂を指す。「あくがる」は魂が身を離れてさまよう意で、この巻では六条御息所の生霊をめぐって繰り返し用いられてきた重要な語である。ここではその語を反転させ、離れがたい心として用いている点が眼目である。他人の魂がさまよい出た巻の末尾で、自分の心は床を離れられないと述べており、同じ語による対比が場面全体に響いている。

なき魂:亡くなった人の魂。
寝し床:かつて共に寝た寝床。
あくがる:魂が身を離れてさまよう。
心ならひ:心の習慣、慣れ。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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