- 歌の意味
- 去っていく方角を眺めやりたい。この秋だけは、逢坂山を霧で隔てないでほしい。
- 鑑賞
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第一部 賢木
御息所の返しを受けた朝、霧が深く立ちこめる中を眺めながら、源氏が一人つぶやいたのがこの歌である。二条院の西の対にも渡らず、自ら招いた寂しさの中で一日を過ごす。伊勢へ向かう旅の空にある相手は、なおさら心を尽くすことが多かったであろうと語られ、第一章はここで閉じられる。
「行く方」は去っていった方角のことである。「逢坂山」は近江との境の山で、名に「逢ふ」を含むため、別れの場面ではその名がそのまま反語的に働く。「霧な隔てそ」は霧よ隔てるなという禁止の言い方で、自然に呼びかける形をとっている。逢うという名を持つ山を、逢えない相手を思う場所として用いており、地名の意味と現実との落差が一首の核になっている。
行く方:去っていく方角。
眺めやる:遠くを見やる。
逢坂山:近江との境の山。「逢ふ」を含む。
な隔てそ:隔てるな。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌