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蔭ひろみ頼みし松や枯れにけむ
下葉散りゆく年の暮かな

歌の意味
蔭が広いと頼りにしていた松は枯れてしまったのだろうか。下葉が散っていく年の暮であることよ。
鑑賞
第一部 賢木

 十月に入って桐壺院の病は重くなり、十一月一日に崩御する。四十九日を過ぎると后たちも次々に院を退出し、藤壺も三条の宮へ移ることになった。師走二十日、雪の散る風の強い日、迎えに参上した兵部卿宮が、庭前の五葉松の下葉が枯れているのを見て詠んだのがこの歌である。源氏はこれに深く心を動かされ、返歌をする。

 「蔭ひろみ」は木蔭が広いのでの意で、庇護してくれる存在をたとえる。「松」は故院を指し、その枯死をそのまま崩御に重ねている。「下葉散りゆく」は松の下の葉が散ることで、後ろ盾を失って散り散りになる人々を表す。目の前の枯れた松という一つの景に、院の死と一族の行く末とを重ねており、たいした内容ではないと本文に記されながら、時節ゆえに深く胸を打つ一首である。

蔭ひろみ:木蔭が広いので。
頼みし:頼りにしていた。
松:ここでは故桐壺院。
下葉:下の方の葉。
年の暮:年末。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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