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嘆きつつわが世はかくて過ぐせとや
胸のあくべき時ぞともなく

歌の意味
嘆きながら私の一生はこうして過ごせということなのか。胸の晴れる時とてないままに。
鑑賞
第一部 賢木

 朧月夜の「心から」の歌を受けて、源氏が返したのがこの歌である。落ち着かない気持ちのまま出ていく源氏の姿は、深い霧の立ちこめる暁月夜の中で、ひどく忍んだ様子ながらなお比類がなかった。その姿を、承香殿の女御の兄である藤少将が立蔀のもとから目にしていた。源氏はそれと知らずに通り過ぎたが、後に非難の材料とされることになる。

 「嘆きつつ」は嘆き続けながらの意である。「わが世」は自分の一生を指す。「胸のあく」は胸の思いが晴れることで、「あく」に夜が明ける意の「明く」を響かせ、相手の歌の「明く」を受けている。逢瀬の朝の歌でありながら喜びには一切触れず、生涯にわたる嘆きとして述べる構成で、許されぬ恋を重ねる者の疲弊が表れている。

嘆きつつ:嘆き続けながら。
わが世:自分の一生。
かくて:このようにして。
胸のあく:胸の思いが晴れる。「明く」を掛ける。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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