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かけまくはかしこけれどもそのかみの
秋思ほゆる木綿欅かな

歌の意味
口に出すのは恐れ多いことだが、あの昔の秋が思い出される木綿欅であることよ。
鑑賞
第一部 賢木

 雲林院にこもる源氏は、風の通う近さでもあるからと、斎院となった朝顔の姫君のもとへも文を送る。取次の中将の君には恨み言を述べ、姫君自身へはこの歌を贈った。唐の浅緑の紙に書き、榊に木綿をつけるなど神々しく仕立てて届けさせている。姫君からは木綿の片端に書かれた返しがあり、源氏はその筆の上達ぶりにも心を動かされる。

 「かけまくはかしこけれども」は、口に出すのも恐れ多いがという意で、神事に用いられる決まった言い方である。「木綿欅」は神事で肩にかける木綿の襷のことで、斎院という相手の立場を踏まえた語である。「そのかみの秋」は野の宮を訪ねた前年の秋を指す。神に仕える相手へ恋の歌を送るという不謹慎さを、神事の語彙で包み込んで押し通しており、この癖こそ見苦しいと本文自身が評している。

かけまく:口に出すこと。
かしこし:恐れ多い。
そのかみ:昔、その当時。
木綿欅:神事で肩にかける木綿の襷。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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