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おほかたの憂きにつけては厭へども
いつかこの世を背き果つべき

歌の意味
世の中一般のつらさにつけては厭い離れたけれど、いつになればこの世を完全に背き果てられるのだろう。
鑑賞
第一部 賢木

 源氏の「月のすむ」の歌を受けて、藤壺が返したのがこの歌である。人々が近くに控えているため、乱れる心のうちを打ち明けることもできない中で、命婦の心づかいも交えて伝えられた。出家という決断を下してなお、東宮への思いは断ちきれず、心の濁りは残るという内容になっている。源氏はあわれの尽きないまま退出し、その夜は一人臥して目も合わない。

 「おほかたの憂き」は世の中一般のつらさを指す。「厭ふ」は嫌って離れる意で、仏教語としては厭離穢土の「厭」にあたる。「背き果つ」は完全に世を捨てきることである。形の上では出家を遂げながら、心はまだ濁ったままだと述べており、相手の歌の「惑ふ」に自らの「背き果つべき」を対置する形になっている。出家をもって決着とせず、なお迷いの中にあることを認めた点に、この人物の誠実さがある。

おほかた:世の中一般。
憂き:つらいこと。
厭ふ:嫌って離れる。仏道に入る意を含む。
背き果つ:完全に世を捨てる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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