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時ならで今朝咲く花は夏の雨に
しをれにけらし匂ふほどなく

歌の意味
時ならず今朝咲いた花は、夏の雨にしおれてしまったらしい。美しく匂う間もなく。
鑑賞
第一部 賢木

 三位中将の「それもがと」の歌を受けて、源氏が返したのがこの歌である。もう衰えてしまったのだからと言いながら、酔ったふりをして受け流そうとするのを、中将たちが咎め立てして無理に盃を勧める。この日の詩歌はみな源氏を讃えるものばかりであった。源氏自身も得意になり、周の文王の子、武王の弟という句を口ずさむ。

 「時ならで」は時季はずれにの意で、季節外れに咲いた薔薇を指す。「夏の雨」はその日降っていた雨である。「しをれにけらし」はしおれてしまったらしいという推量の言い方で、自らの現在の境遇に重ねている。相手が花にたとえて讃えたのを受け、同じ花を用いて謙遜に転じる構成であり、政治的に不遇な立場を花のしおれとして暗に述べている点に含みがある。

時ならで:時季はずれに。
咲く花:ここでは階のもとの薔薇。
夏の雨:この日降っていた雨。
しをる:しおれる。
匂ふ:美しく照り映える。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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