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をちかへりえぞ忍ばれぬほととぎす
ほの語らひし宿の垣根に

歌の意味
昔に立ち返って、どうしても懐かしまずにいられない。ほととぎすよ、かつてわずかに言葉を交わしたこの家の垣根では。
鑑賞
第一部 花散里

 人知れぬ物思いに加え、世の中の情勢までが煩わしくなり、源氏は心細さを募らせていた。故桐壺院の妃であった麗景殿女御と、その妹である三の君を訪ねようと、五月雨の晴れ間に出かける。その道すがら中川のあたりを通ると、こぢんまりとした家から琴の音が聞こえ、大きな桂の木にほととぎすが鳴いた。かつて通ったことのある家だと気づいた源氏は、惟光を遣わしてこの歌を届けさせる。しかし返ってきたのは、そっけない一首であった。

 「をちかへり」は昔に立ち返るという意で、時を遡る心の動きを表す。「ほととぎす」は初夏に鳴く鳥で、昔を思い出させるものとして古歌に多く詠まれてきた。ここでは目の前で鳴く鳥であると同時に、久しぶりに訪れた源氏自身をもたとえている。「ほの語らひし」はわずかに言葉を交わしたという意で、深い仲ではなかったことを自ら認めており、控えめな訪い方になっている。

をちかへる:昔に立ち返る。
忍ぶ:懐かしく思い出す。
ほととぎす:初夏に鳴く鳥。昔を思い出させるものとされた。
ほの:かすかに、わずかに。
宿:住まい、家。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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