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人目なく荒れたる宿は橘の
花こそ軒のつまとなりけれ

歌の意味
人の訪れもなく荒れはてたこの家では、橘の花だけが、軒に人を招く手がかりとなっているのでした。
鑑賞
第一部 花散里

 源氏の「橘の」の歌を受けて、麗景殿女御が返したのがこの歌である。訪ねてくる人もない住まいに来てくださったのは、橘の花のおかげでしょうと述べ、感謝を込めつつ自らの境遇の寂しさを示している。源氏はこの返しに、格別に目立つ人ではないけれど他とは違う方だと改めて思う。この後、源氏はそっと西面の三の君のもとを訪れ、巻はここで閉じられる。

 「人目なく」は人の訪れがないという意で、故院の没後の暮らしぶりを述べている。「荒れたる宿」は手入れの行き届かない住まいのことである。「橘の花」は相手の歌の語をそのまま受け取り、贈答歌として言葉を返している。「つま」は端の意で、軒端を指すとともに、人を誘う手がかりという意を掛けている。訪問を喜びながらも、あなたが来たのは花のおかげだと述べる控えめさに、この人柄がよく表れている。

人目:人の訪れ、人の目。
荒れたる宿:手入れの行き届かない住まい。
軒:屋根の張り出した部分。
つま:端。「妻」「手がかり」の意を掛ける。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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