- 歌の意味
- つらいこの世に今こそ別れを告げる。後に残るであろう名は、糺の神にお任せして。
- 鑑賞
-
第一部 須磨
右近将監の歌を聞いた源氏は、その心中を思って痛ましく感じ、自らも馬から下りて社の方を拝む。神に暇乞いをする形で詠まれたのがこの歌である。物めでする若い供の者は、その姿を身にしみて立派なものと見上げる。この後、一行は御墓に参り、源氏は父院の面影を目のあたりにすることになる。
「憂き世」はつらいこの世のことで、都を離れることを述べている。「とどまらむ名」は後に残るであろう評判のことである。「糺」は糺の森で賀茂の社を指すとともに、「糺す」の意を掛けており、正邪を明らかにする神に判断を委ねるという形になっている。自らの潔白を主張せず、神の裁定に任せると述べる点に、この場面の源氏の姿勢が表れている。
憂き世:つらいこの世。
とどまる:あとに残る。
名:評判、噂。
糺:糺の森。賀茂の社の地名。「糺す」を掛ける。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌