- 歌の意味
- 亡き父上の御霊はどのようにご覧になっているだろうか。なぞらえて眺めていた月も、雲に隠れてしまった。
- 鑑賞
-
第一部 須磨
御墓へ向かう道は草が茂り、露を分け入るうちに月も隠れ、森の木立は深く不気味であった。拝んでいると、生前の父院の面影がはっきりと目の前に現れ、源氏はぞっとするような思いを抱く。そのときに詠まれたのがこの歌である。この後、源氏は明け方に帰り、東宮への挨拶を済ませることになる。
「亡き影」は亡くなった人の霊、面影を指す。「よそへつつ」はなぞらえての意で、月を父院に見立てて眺めていたことを述べる。その月が雲に隠れるという事実によって、父の加護が失われつつあることを暗示している。景の変化がそのまま心情の変化を表す構成で、この巻に繰り返し現れる月の主題の中でも、もっとも不安の色が濃い一首である。
亡き影:亡くなった人の霊、面影。
いかが:どのように。
よそふ:なぞらえる。
眺む:物思いにふけって見る。
雲隠る:雲に隠れる。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌