- 歌の意味
- 惜しくもないこの命に代えてでも、目の前のこの別れを、しばらく引き留めておきたいものです。
- 鑑賞
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第一部 須磨
源氏の「生ける世の」の歌を受けて、紫の上が返したのがこの歌である。命など惜しくはないから、それと引き換えにこの別れを少しでも先延ばしにしたいと述べている。源氏はもっともなことだと思い、見捨てがたく感じるが、夜が明けきってはまずいので急いで出立する。以後、紫の上は起き上がることもできぬほど嘆き沈むことになる。
「惜しからぬ命」は惜しくもない命の意で、相手の歌の「命」をそのまま受け取っている。「代へて」は引き換えにしての意である。「目の前の別れ」は今まさに起こりつつある別れのことで、遠い将来の話ではないことを強調する。相手が誓いの前提の誤りを述べたのに対し、こちらは今この瞬間だけを問題にしており、抽象と具体という形で二首が対をなしている。
惜しからぬ:惜しくもない。
代ふ:引き換えにする。
目の前:今まさに目の前の。
とどむ:引き留める。
…てしがな:…したいものだ。願望。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌