- 歌の意味
- 唐の国に名を残したという人よりもさらに、行方も知られない住まいを構えることになるのだろうか。
- 鑑賞
-
第一部 須磨
源氏は道々、紫の上の面影がつきまとって胸のふさがるまま舟に乗る。日の長いころで追風も加わり、申の時ばかりには須磨の浦に着いた。かりそめの旅にも慣れない身には、心細さも珍しさも同時に感じられる。大江殿という所がひどく荒れて松ばかりが目印になっているのを見て、詠まれたのがこの歌である。
「唐国に名を残しける人」は、異国で客死した中国の故事の人物を指す。「行方知られぬ家居」は、どこにいるとも知られない住まいのことである。故事の人物ですら名は残ったのに、自分はそれ以下ではないかという比較の形をとっており、流離の身の心細さを述べている。大江殿の荒廃という目の前の景から、この後の須磨の住まいを思いやる構成になっている。
唐国:中国。
名を残す:名声や名を後世に残す。
行方知られぬ:どこにいるとも知られない。
家居:住まい、住むこと。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌