- 歌の意味
- 浦人が潮を汲む袖と比べてみてください。波路に隔てられた夜の衣の濡れようを。
- 鑑賞
-
第一部 須磨
源氏が心をこめて書き送った文への返しであるから、紫の上の返事も情の深いものであった。この歌はその中の一首である。品物の色合いや仕立てなども実に美しく、何ごとにも行き届いた様子に、源氏は落ち着いた暮らしの中でこの人を見ていたかったと、いっそう惜しく思う。夜も昼も面影が離れず、忍んで迎えようかとまで思うのであった。
「浦人」は海辺で暮らす人のことで、須磨にいる源氏を指す。「潮くむ袖」は潮を汲んで濡れる袖のことである。「波路」は海の道のことで、二人を隔てる距離を表す。「夜の衣」は夜に掛ける衣で、共寝を表す語として用いられてきた。相手の海辺の語彙をそのまま引き取りながら、涙の量を比べてみよという挑戦的な形にしており、待つ側の苦しさを訴えている。
浦人:海辺に住む人。
潮くむ:海水を汲む。
波路:海の道。
へだつ:へだてる。
夜の衣:夜に掛ける衣。共寝を表す。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌