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荒れまさる軒のしのぶを眺めつつ
しげくも露のかかる袖かな

歌の意味
いよいよ荒れていく軒の忍草を眺めながら、しきりに露のかかる袖であることよ。
鑑賞
第一部 須磨

 花散里からも、悲しく思うままに書き集めた文が届けられる。見慣れない筆づかいがかえって珍しく、源氏はどれもこれも読んでは慰められるものの、それがまた物思いの種にもなるのであった。この歌はその文の中の一首である。源氏はこれを読んで、葎のほかに後見もない暮らしぶりを思いやり、家司に命じて邸の修繕をさせる。

 「荒れまさる」はいよいよ荒れていくの意である。「しのぶ」は軒に生える忍草に「偲ぶ」を掛けた語で、荒れた家の景と、人を慕う心とを一語で結んでいる。「しげく」は繁くの意で、草が茂ることと、涙がしきりであることを掛ける。「露」は涙をたとえた語である。植物の生い茂る景がそのまま涙の量に転じる構成で、庇護を失った者の暮らしが景として述べられている。

荒れまさる:いよいよ荒れていく。
しのぶ:軒に生える忍草。「偲ぶ」を掛ける。
しげく:繁く。草が茂る意と、しきりにの意を掛ける。
露:涙のたとえ。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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