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心から常世を捨てて鳴く雁を
雲のよそにも思ひけるかな

歌の意味
自ら進んで常世を捨てて鳴く雁のことを、これまでは雲の彼方の他人事とばかり思っていたことだ。
鑑賞
第一部 須磨

 良清に続いて、供の民部大輔が唱和したのがこの歌である。かつては雁の渡りを他人事として眺めていたが、今は自分たちがまさにその立場にあるという感慨を述べている。この場に集まっているのは、世の情勢に流されずに源氏に付き従った四、五人ばかりの者たちであった。

 「心から」は自分の心から、自ら進んでの意である。「常世」は常世の国、すなわち雁の来る遠い土地のことで、ここでは元いた場所を指す。「雲のよそ」は雲の彼方の意で、無関係な他人事のたとえとして用いられる。自ら望んで故郷を離れたという点で、源氏の自発的な須磨退去と雁とを重ねており、供人の立場から主人の選択を静かに受け止めた一首になっている。

心から:自分の心から、自ら進んで。
常世:常世の国。渡り鳥の来る遠い土地。
雲のよそ:雲の彼方。無関係な他人事のたとえ。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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