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あかなくに雁の常世を立ち別れ
花の都に道や惑はむ

歌の意味
名残尽きないのに、雁の常世を立ち別れて、花の都への道に迷うことでしょうか。
鑑賞
第一部 須磨

 源氏の「故郷を」の歌を受けて、宰相が返したのがこの歌である。まったく立ち去る気になれないという思いを述べている。この後、都への土産として趣あるものが用意され、源氏からは黒駒が贈られた。互いに人目を憚って、笛の名器などのほかは形見も交わせないままである。

 「あかなくに」は名残が尽きないのにという意である。「雁の常世」は雁の来る国の意で、供人たちの歌に用いられた語を受け継いでおり、ここでは須磨を指している。「花の都」は花の咲く都のことで、須磨と対比される場所である。帰る側が帰り道に迷うと述べる構成で、都へ戻ることを喜ぶのではなく、別れがたさとして述べており、この人物の情の厚さが表れている。

あかなくに:名残が尽きないのに。
常世:常世の国。渡り鳥の来る土地。
立ち別る:別れて去る。
花の都:花の咲く都。
惑ふ:迷う。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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