知らざりし大海の原に流れ来て
ひとかたにやはものは悲しき
- 歌の意味
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知りもしなかった大海原に流れ着いて、悲しみは一つ方向だけのものだろうか。
- 鑑賞
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第一部 須磨
三月上巳の日、こういう境遇の者は祓えをするものだと聞き、源氏は海辺へ出て陰陽師を呼び、祓えを行わせる。舟に仰々しい人形を乗せて流すのを見ていると、それが自らの身の上に重ねられて感じられた。そのときに詠まれたのがこの歌である。この後、にわかに風が吹き出し、恐ろしい嵐となる。
「大海の原」は大海原のことで、目の前の海である。「流れ来て」は流れ着いての意で、人形が流されることと、自らが都から流されてきたこととを重ねている。「ひとかたにやは」は一つ方向だけだろうか、いやそうではないという反語である。祓えの人形という具体物に自らを重ねる構成で、この巻の主題である流離が、儀式の所作の中で改めて意識される場面になっている。
知らざりし:知りもしなかった。
大海の原:大海原。
流れ来:流れ着く。
ひとかた:一つの方向、一通り。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- 前の歌
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たづかなき雲居にひとり音をぞ鳴く 翼並べし友を恋ひつつ
- 次の歌
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八百よろづ神もあはれと思ふらむ 犯せる罪のそれとなければ